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姉から祖母への最後の恩返し

s_033私の姉はメイクアップアーティストをしています。
芸能人の方のメイクも担当しており、それなりに名の知れた存在だそうです。
しかしそんな姉も、その道へ進む際には両親の猛反対に遭っていました。

元々一般企業で働いていたのですが、それを辞めて美容の専門学校へ行くと言い出したからです。
当時は経済状況も芳しくはなく、せっかく正社員として働いているのに何と言うことだと両親は怒るのです。
さすがの姉も防戦一方だったのですが、そんな中で救いの手を差し伸べてくれたのが祖母です。

祖母は父の母で、私たちと長年同居をしていました。
以前はかくしゃくとして元気な人だったのですが、さすがに年齢を経るにつれて家に居るようになり、私たちが成人をする頃には殆どを部屋で過ごしていたと思います。

そんな祖母ですが、両親の凄い剣幕に思わず部屋を飛び出してきたのでしょう。
美容専門学校に入りたいという姉に対し、自分の好きなことをするんだったら良いじゃないかとエールを送ってくれたのです。

その言葉が効いたのかは分かりませんが、結局両親は姉の申し出に折れる形で了承。姉は無事、美容専門学校へと入学しました。
こうして数年が経過し、姉も数々のメイクを施すように。そんな活躍を喜んでくれていたのは、恐らく祖母だったと思います。

そんな祖母ですが、90歳も半ばになると急激に弱りだし、ついには老衰という形で世を去ってしまいました。
苦しまずに亡くなったことは良かったのですが、やはり寂しいものです。私たち家族は、葬儀の際にわんわん泣きました。
そんな葬儀にあって、気丈に振る舞っていたのが姉です。姉は自分が死に化粧をすると名乗り出たのです。

恐らく姉としては、自分の活路を見い出させてくれた祖母へ出来る、最後の感謝と思っていたのでしょう。私も姉の横で祖母に死に化粧をする姿を眺めていましたが、テキパキとメイクを施された祖母はまるで生きていて眠っているかのようなお顔です。

まさか祖母も、ああいった形で恩返しをされるとは思ってもいなかったでしょう。
何となく天国から祖母の「ありがとうね」という声が聞こえてきた、そんな感じがしました。

そんな姿を見て、私たちの両親もまた涙を流していましたね。


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